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2012.3.7 アジアカップを終えて・・・

■はじめに・・・

今回、私がグランプリを頂いたファッション部門のヘアースタイルについてですが、そのままのスタイルで街を歩くのは、奇抜過ぎます。これは、ファッションショーと同じように、スタイルのバランスやカット技法、デザイン性、カラーの使い方などを表現しているものであり、実際にはそれらをソフトに使うことにより、お客様に活かされます。

もっともわかりやすい例でいえば、デイビット・ベッカムの“ソフトモヒカン”です。

スタイル名に“ソフト”とついている通り、本来のモヒカンとは奇抜さにおいてかけ離れており、本来のモヒカンであれば、あそこまで流行しなかったはずでしょう。

つまり、今回グランプリを頂いたヘアースタイルのすべての要素を上手く使うことによって、最高のデザインや技術がお客様に還元できる・・・それがヘアーコンテストというものなのです。

 

 

 

■OMCアジアカップへの勝負

今回、私が出場したOMCアジアカップは、前々回、北京で開催された同大会に引き続き、2度目の出場となりました。

今回の一番の目的は、前回逃した“グランプリを勝ち取るため”でした。

そのために2012年1月1日を練習開始日に設定し、2月19日のアジアカップ開催日までの約1ヶ月半練習に没頭できる環境を作るために、大会出場を決意した2011年12月中旬から年末までに大会終了までの全ての仕事を先倒しして終わらせなければなりませんでした。

そして、確固たる意志を固め、昨年大みそかの締めのあいさつで「自律と自立」という言葉をスタッフに投げかけたのと同時に自分自身に問いただし、決意をしました。

そして、翌日、2012年元旦の早朝から練習がスタートするのでした。

1月2日からは師匠である髪ingの田中トシオ先生のもとへ足を運び、泊まり込みで指導していただきました。

久々の師匠の指導はとても厳しく、そして愛のあるものでした。

私は、コンテストは精神鍛錬であり、人間的成長ができる機会であると思っています。

毎朝スタッフが出勤する前に朝練を行ない、営業中はカラーの仕込みを行なったり、モデルを務める横浜店スタッフの青木で練習をさせてもらったり、夜はスタッフの練習をみる傍ら、ひたすら練習を繰り返し行いました。

大会を目前に控えた2月中旬、髪ingでの合宿がやってきました。

以前より髪ingの合宿は、早朝から深夜まで行ない、コンテスト一色となります。

合宿では、セットの練習をメインに行なうと共に、カットとカラーの仕込みも行いました。

基本的に本番を想定し、セット、カット共に本番よりも最低1分短く計り、何か起きた時のための予備時間を用意しておきます。

合宿でのカット練習は、KEENのスタッフを髪ingまで呼び寄せ、田中先生に指導いただきながら行ない、カラーは約3日間で12時間くらい掛け施しました。

そして合宿最終日、日本チャンピオンになったときに借りたお守りを借り、合宿を終了するのでした。

翌々日、羽田空港から会場のある沖縄までの道のりも、周りの空気に流されないよう、必要最低限の会話のみしかせず、音楽を聴きながら、ずっとイメージトレーニングを行ないました。イメージトレーニングは、本番と同じ時間を計り、頭の中で、工程を練習するのですが、これを行うことにより、本番での迷いが吹き飛び、周りに飲まれず、自分の世界に入ることができます。この時はテンションが上がる曲を聴き、繰り返すことで、本番もこの曲を想像すれば、イメージしたように進むのです。このイメージトレーニングは昔からやっており、集中力のない私にとって、特に効果的でした。

そして、沖縄のホテルに到着次第、練習とカラーの上乗せを夜中3時まで掛け行ないました。

2月19日大会当日の朝は6時に起床し、一度練習を行ない、モデルのメイクと仕込みを行ない会場へ向かうのでした。

他の選手が各々の競技に対する準備をする中、私も控室で、常に音楽を聞きながら、イメージトレーニングを行ない、徐々に大会への準備を整えていきます。

そして、いざ、会場へ入り、一礼すると、席番号に案内されました。

大会開始までに、監視員のモデルチェックなどがありますが、その間にも練習の成果が試されます。たかが競技が始まるまでの5分ですが、このわずかな時間にイメージトレーニングを早送りで進めることにより、心技体が最高の状態になり、今までの練習が報われるのです。

本来、このような場で自分の力を出し切れることは非常に難しいと思います。だからこそ、自分の力を最大限発揮できる状態にすることも練習の一つだと思います。

今回出場した2部門のうち1つであるロングヘアー部門では、1か所、自分の思い通りにいくことができず、自己採点は最悪でした。

しかし、翌日にもう1部門控えていたために、いかに、初めの部門の結果を引きずらず、切り替えることができるかが、勝負の分かれ目でした。

ホテルに帰ってきてから、同行したスタッフ2人の頭のカット練習を行ない、セット練習を深夜12時まで行い、そこから、カラーの入れ直しを行い、最終的には深夜3時までかかりました。

翌日は、初日より、競技開始時刻が1時間遅かったため、7時に起床し、前日と同じようにイメージトレーニング行い、持てるすべてをトレンドカット部門にぶつけたのでした。

競技終了後、田中先生から「練習の成果が出たな」との言葉をいただきました。これは田中先生からの最高の褒め言葉です。この一言で、これまでしてきたことが報われたような気がしました。

その後、先輩である佐藤秀樹先生や村上重雄先生から「カットはだんとつで良かったよ」と言っていただき、やってきたことが本番で出し切れたことに感謝するのでした。

結果、ロングヘアー部門は“銀メダル”、トレンドカット部門は“金メダル”そして、総合で“グランプリ”をいただいたほか、沖縄県知事賞もいただきました。

結果は最高でした。

やはり、元旦から全力で取り組んできたことが結果として、表現できこれ以上のことはありませんでした。

それと同時に、すべてのことに感謝が生まれてきました。

日本チャンピオンの時もそうですが、この大会を主催していただいた世界の理美容機構、運営の先生方、山口トレーナー、山本トレーナー、サロンのスタッフ、モデルの青木、そして家族に感謝しました。

そうやっていろいろな人のおかげで今、この場に立つことができていると思いました。

成功する人は、いかに人のために自分の時間をつかえるかが大事だと思います。

師匠の田中トシオ先生は元旦から、付きっきりで指導を行ない、肺炎を起こしながらも、OBをはじめ、弟子たちに時間を費やしていました。

これは簡単なことではなく、人を育てることの大変さを改めて感じることとなり、田中先生の偉大さを再確認することとなりました。

私も田中先生のこの想いを、自分のスタッフをはじめ、若い理容師たちに伝えいかなければならないと思いました。

 

 

2012年3月

KEEN creative hair

代表 倉田 和俊